葬儀が終わると、納骨式を執り行い遺骨をお墓に納めます。
納骨は、いつまでにという決まりはありませんが、四十九日の法要と一緒に行うのが一般的です。
葬儀後の法要を葬儀屋さんにお願いするのは、よほど著名な方が亡くなった場合です。
つまり、納骨も遺族の代表である施主が計画して行っていくことになります。
納骨式の当日はどんなことを行うのでしょうか。
そのために、どの時期に、どのような準備を進めておくとよいのでしょうか。
また、納骨のお布施も含めてどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
今回は、あなたが施主になる場合の「納骨の仕方」についてのお話です。
曹洞宗にスポットを当てて調べたところ、他の宗派と納骨の仕方に大きな違いはありませんでしたが、お墓の作りや法要の際の焼香の作法など特徴的な部分がありました。
ここでは、四十九日法要後に行う納骨式について見ていきます。
菩提寺もお墓もすでにある場合の曹洞宗の納骨式の流れを紹介し、そこから逆算するやり方で当日までに施主がどんな準備をすべきなのかを解説いたします。
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【曹洞宗】納骨の仕方や納骨式の流れ
はじめに、納骨式の流れに沿って施主の行うべきことについてみていきましょう。
施主とは、お葬式後の法要を営む人のことです。
納骨式の場合、お葬式の喪主だった人が務めることがほとんどです。
納骨式当日のイメージが施主の頭の中にないと、準備を進めることができません。
まず、納骨式がどのようなものかその流れを理解してください。
四十九日法要が終了したところから話を始めます。
埋葬許可証、墓地使用許可証の提出
埋葬許可証をお墓の管理者に渡します。
埋葬許可証がないと納骨することはできません。
亡くなった方を火葬をした際にお骨と一緒に「埋葬許可証」を受け取っています。
市町村役場に死亡届を提出すると発行される「火葬許可証」に火葬場の認印が押されたものです。
お墓の管理者とは、お寺の場合は僧侶、霊園の場合は管理事務所です。
霊園墓地の場合は、自治体から発行された「墓地使用許可証」が必要になります。
印鑑が必要になることがあるので持参します。
お墓の準備
納骨式の日までに、墓石または墓誌に、故人のお名前や戒名、没年月日などが彫刻されているはずです。
お墓にお供えするものは、施主またはその家族がすべてを準備し、所定の場所に置きます。
曹洞宗のお墓は「いらないものはない」と言われているフル装備のお墓です。
したがって、花立やろうそく立て以外にお線香を供える香炉や水を入れる水鉢が設けられています。
水鉢にはお水を入れます。
お線香ではなく、抹香を使って焼香をする場合には、そのセッティングも必要です。
曹洞宗の法要のときには、お墓の後ろに卒塔婆(そとうば・そとば)という細長い板を立てます。
表にはお経や戒名を、裏には梵字や施主名、建立月日が書かれまています。
卒塔婆は、施主が立てたり、親族が立たりして故人を供養するためのものです。
ただし、曹洞宗のお墓であっても卒塔婆を立てない地域がありますから、菩提寺に相談して確認をしてください。
お墓の準備が整ったら、お寺のお坊さんに確認をしていただくと安心です。
ろうそくや火種炭(抹香を使用する焼香の場合)に点火するのは、確認後です。
私の菩提寺の住職さんは、お墓の諸々のセッティングのときから一緒にいてくださり、その場で細かく教えてくださったので迷うことはなく助かりました。
施主のあいさつ
お墓の準備が整ったら、いよいよ納骨式を始めます。
参列者に並んでいただいて、施主があいさつをします。
内容は主に次の3つです。
- 納骨式に参列してもらったことへのお礼
- 遺族の近況報告
- これからのお付き合いに対するお願い
最後に、納骨式の後には会食があるときは、そのことをも伝えます。
目的は屋外で行う納骨ですから、あいさつはできるだけ短時間で終わるようにします。
特に、納骨を真夏の日中に行わなければならなくなった場合、参列者の体調への配慮が必要です。
納骨
お墓の納骨室にお骨を入れます。
お骨は骨壺のままお墓に入れる場合と布袋に移して入れる場合、骨壺から出してお骨だけを納める場合があります。
当日になって慌てないために、事前に菩提寺の住職さんや霊園の管理事務所にどのやり方なのかを教えてもらいます。
布袋が必要なときは、その入手先なども教えてもらってください。
また、納骨のために石を動かす作業は、石材業者に依頼したほうがよいです。
重くて動かせない、構造が複雑になっていることがある、石を動かしたときに衣服が汚れることがあるというような理由からです。
けがをしたり、墓石を痛めてしまったのでは、残念です。
読経と焼香
納骨終了後、僧侶によって読経が行われ、参列者が焼香をします。
参列者の人数にもよりますが30分から1時間ぐらいかかります。
焼香開始の合図が僧侶からあったら、施主から焼香をします。
曹洞宗の場合、お線香は1本立てますがお墓の香炉の形によって寝させる場合もあります。
寝させる場合は、お線香の向きなどは、あまり気にせずにやりやすいほうでよいです。
施主に準じて他の参列者が焼香をしていきます。
抹香を使って焼香する場合は、葬儀のときと同じ曹洞宗のやり方で行います。
1回目は、つまんだ抹香を頭のところで押し頂いて、2回目は押し頂かずに香炉に入れます。
焼香順は、施主が参列者をそっと促すなどして、譲り合うことがないように気配りをします。
全員の焼香が終わったら、納骨式は終わりです。
僧侶の指示に従って、ろうそくの火を消します。
施主は参列者にお礼を言い、会食の会場に案内をします。
お供えものを下げて、会食の会場に移動させます。
お花やろうそく、線香などの後始末を行います。
施主一人で全てを行うことが難しいので家族に助けを求めたり指示を出したりして、会食の会場でお客さんを待たせないようにします。
会食
納骨式が終了する時刻にもよりますが、四十九日法要と一緒に行うと数時間はかかりますから会食の場を設けるのが常識的です。
事前に決めた席順に従って、参列してくださったお客さんを席に案内し、着席してもらいます。
会食の始まりを知らせるあいさつの場でも参列いただいたことに対するお礼を述べて、納骨式を締めます。
僧侶も必ずお招きします。
事前に参加していただけるか確認をしておき、参加していただけないときは御膳料をお渡しします。
お寺以外の場所にあるお墓に来ていただいている場合は、御車代も一緒にお渡しします。
なお食事のメニューなどについては、以下の記事を参考にして下さい。
僧侶様が辞退された場合の御膳料、御車代も記載しています。
納骨式までに施主が準備する事とそのタイミング【曹洞宗】
納骨式当日のイメージができあり、そのためにどんな準備をいつ行うかが大切なことがはっきりしてきました。
四十九日の法要と一緒に納骨式を行うとすると、お葬式後そんなにのんびりしてはいられません。
日常の生活を取り戻しながら、法要や納骨に関係する方たちと相談したり打ち合わせしたりしていくことになりますから、どのタイミングで何をしておくのかという計画が大切です。
納骨式のための準備について順を追って解説します。
納骨式の日取りと参列者を決める
四十九日の法要の後に行う納骨式の日取り決めについて考えます。
亡くなった日から四十九日目に行うのですが、参列してくださる方のことを考えて週末に行われることが多くなりました。
四十九日より早めの週末を選ぶとよいです。
忌中の期間を短くしようとする現代の風潮によるものです。
まず第一に、菩提寺にお坊さんの都合をうかがいます。
その後、参列者の都合を確かめてから決めます。
全員参加が無理なら、年長者の都合を優先します。
お葬式の直後に、菩提寺のお坊さんや参列者に相談すると何度もやり取りをぜずに決めることができます。
納骨式の日取りを相談するタイミングは、お葬式の直後です。
四十九日の法要には、二親等までの親族が参列するのが一般的ですから、納骨式の参列者も同じになります。
故人がお世話になった方や友人を招くこともありますが、人数が多くなれば費用がかさみますし、招待の基準があいまいだと人間関係が壊れてしまうきっかけにもなりかねませんから、基準を明確にして参列者を決めることが重要です。
お葬式の直後に口頭で納骨式に参列していただく約束をしても、日時、会場、服装などについてはがきなどの書面でお知らせします。
お葬式のときは、遺族も慌てていますが参列者も気持ちにゆとりがあるわけではありません。
また、電話で念を押すことも行き違いを減らすために必要な配慮です。
菩提寺や霊園に日時や参列者の人数を知らせる
菩提寺にお墓がある場合、お葬式の後に僧侶に相談して日取りを決めることはできますが、霊園にお墓がある場合は希望の日取りを管理事務所に知らせて決めることになります。
法要や納骨式を行うには、部屋を確保しなくてはいけないからです。
法要や納骨式の開始時刻を決め、大まかな参列者の数を知らせます。
このときに、当日までの準備について相談し、確かめることができます。
お葬式の後、できるだけ早く日時を決められると、納骨式までに準備が整うかを心配せずに進めることができます。
墓石や墓誌に戒名などを彫刻してもらう
故人の戒名などを墓石や墓誌に追加彫刻することを石材業者に依頼します。
墓誌とは、墓石に戒名を彫刻する余裕がない場合などに、戒名を彫刻するための石板です。
彫刻作業に2週間~3週間かかりますから、納骨式の日取りが決まったらすぐに、依頼をします。
また、納骨式で納骨室の蓋を開ける作業の依頼もこのときにします。
戒名や没年月日、俗名(生きていたころの本名)、没年齢を彫刻してもらいます。
戒名には常用漢字以外の文字が使われることが多いので、位牌に書かれた文字列の写真を渡すと間違いがないです。
そのほかの没年月日なども書いたものを渡します。
おそらく、石材業者が何度も念を押すはずです。
彫刻作業をする日が決まったら、墓地を管理しているお寺や霊園に連絡をします。
墓石に彫る場合は、魂抜きをする必要があるのでお寺に依頼し、お布施をします。
墓誌に彫刻する場合は、魂抜きはしませんが、石材業者が持ち帰って作業をすることが多いので、連絡なしに持ち帰ってしまうとトラブルになります。
卒塔婆を依頼する
前に述べたように、卒塔婆は立てない地域がありますから、あなたの地域では立てるのかを菩提寺に確認してください。
また、卒塔婆を立てるのが施主だけに限られる地域もありますし、施主も親族も立てるという地域もあります。
卒塔婆は、お寺にお願いすると納骨式に間に合うように作ってもらえます。
親族の分がある場合は、それもまとめてお寺に依頼するのが施主の仕事です。
お墓の卒塔婆立ては、卒塔婆を立てられる数に上限がありますから多ければよいというものでもありません。
お寺に卒塔婆を依頼するタイミングは、納骨式の2週間前までと考えるとよいです。
依頼後、板を準備したり戒名などの文字を毛筆で書いたりする時間が必要になるからです。
最近はプリンターで印字することもあるようですが、それでも2週間前までには申し込んだ方が間違いを減らすことができます。
会食の会場を押さえ、引き出物を決める
会食の場所は特に決まりはありません。
都合に合った場所で行います。
自宅・料亭・レストランなどどこでも構いません。
四十九日の法要と一緒に行う場合、お供えものやご仏前を頂くと思います。
引き出物を何にするか、いくつにするかを決めます。
会食会場の申し込みのタイミングは、会場も引き出物も、日取りと参列者が決まり次第ということになります。
会食の目的、会食の日時、人数、お膳の配置、引き出物の渡し方など思いつく限り詳しく依頼します。
引き出物をご自身で準備する場合は3,000円~5,000円前後が相場となります。
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納骨式までにお墓の下見をする
墓石や墓誌に戒名などの彫刻が終わったときに石材業者から連絡が入りますから、その確認を兼ねて、お墓のそうじをして、花立や水鉢、香炉などの確認をするとよいでしょう。
納骨のためにお墓の下見は、菩提寺の僧侶や霊園の管理事務所に連絡してから行います。
まず、参列者の数がほぼ確定していますから、人数を知らせます。
次に納骨式のことで分からないことを聞きます。
納骨式の流れ、お墓のお供えものの種類や配置、焼香のこと、あいさつのこと何でも相談します。
菩提寺や霊園に相談することで、納骨式の際に必要なろうそく、お線香、お花、お供えものなどの具体的なイメージがもてるようになります。
また、自宅から持参しなくても貸してもらえるものも分かって、安心して当日を迎えることができます。
菩提寺以外に頼りになるのが、法要や納骨の経験がある親族や近所の年長者です。
普段からのお付き合いが大事ですし、相談することがきっかけでこれからのお付き合いが生まれることもあります。
納骨式に必要なものの確認
前日までに、必要な物がそろっているか必ず確認をします。
下の表を参考に確認をしてください。
準備する物 |
留意点など
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埋葬許可証 | 火葬後に必ず喪主が受け取っているはずなのですが、お葬式の際は慌ただしい数日間を過ごすので受け取ったことを忘れがちです。 早めに許可証があることを確認しておいてください。 お骨の箱の中に入れて忘れてしまい、納骨する直前に見つかることがよくあるそうです。 |
墓地使用許可証と印鑑 | 霊園でお墓の永代使用権を買って、使用者となったときに受け取っているはずです。早めに確認をして、紛失していることに気づいたら、再発行手続きが必要になります。 |
お布施やお礼、会食費用 |
お寺へのお布施と塔婆料、石材業者へのお礼などが考えられます。 お布施や塔婆料は不祝儀袋にお礼は封筒に入れて渡します。 会食会場へ当日支払いをするのかは事前に確認しておいてください。 金額の目安は次の項で紹介しています。 |
お墓のお供えもの | 特に決まりはありませんが、一般的には、お花やお菓子、丸餅やお酒などです。 果物はお菓子に分類されますから、果物をお供えすることもできます。 故人が好きだったものをお供えすればよいです。 お菓子などは持ち帰って遺族や参列者が食べますから、日持ちのするものを選びます。 お酒の持ち込みを禁止している場合があるので菩提寺や霊園に確認が必要です。 |
お墓参りグッズ | 数珠・ろうそく・お線香・点火用ライターなどです。 数珠は貸し借りをしないのが原則です。家族分を用意してください。 焼香の抹香を使う場合は準備が必要です。 |
会食会場に持ち込むもの | 引き出物や、席順表などです。 自宅以外で行う場合、前日までに料亭やレストランに引き出物を預けることができることがあります。 予約時に確認をしておいてください。 |
【曹洞宗】納骨式にかかる費用について
法要や納骨の施主を務めるということは、それらに関わる費用を負担するということです。
納骨にはどのくらいの経費が掛かるのでしょうか。
下の表は全国の平均的な費用の目安です。
曹洞宗の納骨式に必要なものをピックアップしました。
四十九日の法要に関わる費用は除いた金額になってます。
墓石の彫刻料などは依頼したときに確かめられますが、お布施は地域によって違うことがあるので、親族やご近所の年長者、場合によってはお寺の住職に確認が必要です。
項目 |
金額
|
---|---|
納骨のお布施 | 1万円~5万円 |
墓石魂抜きお布施 (墓誌は不要) |
1万円~5万円 |
卒塔婆料 | 3,000円~5,000円 |
御膳料・御車代 | 1万円~2万円 |
墓石や墓誌への彫刻料 | 3万円~5万円 |
石材業者の立ち合い料 | 1万5,000円~3万円 |
法要部屋の使用料(霊園の場合) | 1万円~3万円 |
お供えもの代、ろうそく・線香代 | 1万円~3万円 |
通信費 | 250円×人数 |
四十九日法要のお布施、引き出物代、会食代などは別途必要になります。
遠方からきてくださる方の宿泊代が必要になる場合もあります。
納骨に関わる費用はざっと見積もっても10万円を下回ることはないようです。
私は葬儀の喪主やその後の法要の施主になったことはありませんが、納骨にこんなに費用がかかることが分かり驚きました。
事前に知ることで、備えをすることができますね。
なお前述したように四十九日法要のお布施は別費用となります。
一般的な相場を以下の記事でご紹介していますので参考にして下さい。
但しここで一つ注意点があります。
四十九日法要と納骨法要の分のお布施を一緒に包んで構いませんが、単純に両者を合算するということでもありませんので、必ずお寺さんに確認するようにしてください。
お布施袋は以下のようなお布施専用のものか、表裏白無地封筒を使用してください。
「お布施」の下に施主の氏名を書きます。
裏面は、住所、氏名、金額をその順で黒墨を使って書いて下さい。
お札はできるだけ新札を使用し、入れ方は慶事の時と同じように入れます。
つまり、封筒の表面とお札の表面は同じでお札の人物像が上になるようにします↓
お布施はお寺さんへお渡しするものであり、お寺さんに不幸があったわけではないためです。
御膳料や御車代については
以下のような白無地一重の封筒を使用します。
表書きはそれぞれ
「御膳料」「御車代」と黒墨で書きます。
また「お布施」と表書きすれば
お布施袋として使って構いません。
曹洞宗の納骨の仕方まとめ
私が調べた限りでは、納骨の仕方は曹洞宗だから特別ということは少なかったです。
この記事が、納骨式の流れを理解する手助けになり、計画的に準備を進めたいと思っていらっしゃる方のお役に立ったでしょうか。
- 曹洞宗の納骨の仕方は他宗派とあまり変わりがなく、どちらかというと地域による違いが大きい
- 納骨式の流れを理解すると、施主がすべきことが見えてくる
- 四十九日法要と一緒に納骨する場合が一般的だか、墓石の彫刻などに時間が必要で、葬儀後すぐに準備に取りかからないと間に合わない
- 納骨の仕方については、菩提寺の住職・霊園の管理者や親族・近所の年長者に相談すると詳しく教えてもらえる
- 納骨の費用は10万円以上かかる
ゴールを設定して準備を進めることが大切だと思い、納骨式当日のことを調べました。
施主がするべきこと、配慮しなくてはならないことがたくさんあり、正直なところ大変だなと思いました。
その一方で、これまで先人が実践してきたことには、必ずそのときどきの人々の思いや願いが込められているということも感じました。
今後、施主になることがあったら、心を込めて納骨を行いたいですし、施主になった方を見かけたら心から「お疲れ様です」と言葉をかけたいです。
なお、曹洞宗の仏壇については
以下の記事も参考にして下さい。