葬式で香典やお布施を包むときに使用するものを袱紗(ふくさ)といいます。
あなたも一度は見かけたことがあるのではないでしょうか?
絹や縮緬(ちりめん)で作られた、やわらかい素材のものです。
汚れがつきにくい安価なポリエステル生地のものもあります。
ふくさには慶事用と弔事用があり、色と種類、香典やお布施の包み方、渡し方などに決まりがあります。
今回は葬式で使用するふくさについて、徹底解説いたします。
葬式で香典を包むふくさの色
ふくさのカラーバリエーションは豊富ですが、慶事用は暖色系、弔事用は寒色系を使用します。
葬式のふくさに適した色(寒色系)
紺、深緑、灰緑、緑、うぐいす、灰青、グレー、紫
なお、紫色は慶弔両用です。
また弔事用のふくさには、蓮、菊などの仏花が描かれたものもありますが、一般的には、弔事用は無地のものを選ぶのがよいとされています。
しかし、美しい仏花が描かれていたり、きれいなレース模様がほどこされたふくさは、特に女性であれば魅力的ですよね。
実際インターネットで検索すると、柄付きの弔事用ふくさがたくさん販売されています。
↑縁に小花柄
さりげない小花柄が上品ですね。
↑慶弔両用2枚セット(弔事用は仏花の柄)
慶弔両用セットで、それぞれに相応しい柄が描かれています。
弔事用は仏花が描かれていて、気持ちが伝わる素敵なふくさですね。
冠婚葬祭のあり方、価値観も多様化した現代においては、弔事を意識した柄であれば問題ないようです。
あくまで控えめで、上品なものをオススメします。
家紋つき、名前入りのふくさもあり、より格式が高く、周囲からの印象も良くなります。
ご両親から受け継がれたものをお持ちでしたら、ぜひご利用ください。
葬式で香典を包むふくさの種類
葬儀で使うふくさの種類は3つに分けられます。
金封ふくさ
香典の金額 3万円以下
香典をサッと差し込んで使用することができるふくさです。
現在、香典を包むふくさとして販売されているものの多くはこのタイプになります。
本来は略式なので、香典の金額が少ない場合や若い年齢の方向けですが、とても便利なので、初めてふくさを購入されるならオススメです。
私は紫の金封タイプを1つ持っていて、結婚式・葬式・法事に使用しています。
香典の持ち運び、取り出しもとてもスムーズなので、扱いに慣れていなくても大丈夫です!
爪付きふくさ・台付きふくさ
香典の金額 3万円以上
四角い布状のふくさになります。
ふくさがほどけないように爪をループにひっかけて留めることができたり、香典を乗せる台(切手盆)がついていたり、とても便利なふくさです。
上記の商品のように、爪付きと台付きがセットになったものが多いです。
金封ふくさよりも品格があり、作法をより重んじる方、年齢を重ねられた方にオススメです。
私は金封ふくさを結婚式で使用した際に、祝儀袋が大きくて入らずに困ったことがあります。
しかしこれは包むタイプなので、大きめの祝儀袋、不祝儀袋でも心配ありません。
早速2つめのふくさとして購入しました!
台付きふくさについている切手盆はリバーシブルになっており、弔事用は暗い色を表にして使用します。
慶事用の明るい色を表にしないように注意しましょう!
正式なふくさ
昔からある風呂敷タイプのシンプルなふくさです。
同じ四角い布状のふくさでも、この形が正式なふくさと言われています。
弔事でのふくさの包み方
弔事の場合、左開きになるように包みます。
金封ふくさの場合と、四角い布状ふくさの場合に分けて、より詳しく説明します。
金封ふくさの場合
金封ふくさは左開きで使用します。
袋が右側にくるように開き、香典袋を左から差し込んで使用します。
四角い布状ふくさの場合
爪付きふくさの場合は、爪が左側にくるように広げます。
真ん中よりやや右側に香典を置き、右→下→上→左の順でつつみます。
下を先にたたんで、上をかぶせるようにするのは、不幸が逃げるという意味があります。
また、左側で普段よく使う右側を押さえるように包むことで、不幸が簡単に繰り返さないようにという意味もあります。
どっちだったかな?と迷ったら、上記の意味を思い出してみてください。
慶事の包み方は、反対になります!
金封ふくさ 右開き
四角い布状のふくさ 左→上→下→右
(上を先にたたんで下をかぶせることで、幸せを受け止めるという意味があります)
葬式受付でのふくさに包んだ香典の渡し方
葬儀の受付は混雑することが多いですが、ふくさは必ず受付係の前で開けるようにしましょう。
- 「このたびはご愁傷様でございます」とお悔やみの言葉を述べて、一礼します。
- ふくさを右手にのせ、左手でふくさを開きます。
または、受付台の上にふくさを置いて、左開きで開きます。 - 香典を取り出したら、ふくさを素早くたたみます。
- 受付係が表書きを読めるように、香典の向きを相手の方に回転させて、両手でお渡しします。
ふくさは受付台に置き、香典をそのままお渡しする場合と、たたんだふくさ(または切手盆)の上に香典を置いてお渡しする場合の2種類があります。
「ご霊前にお供えください」と言いながら渡せるとより丁寧です。
●お悔やみの言葉について●
葬儀の受付では、何も言わずに一礼だけでも十分です。
または、「このたびは・・・」と語尾を濁すようにして最後まで言わなくてもよいです。
はきはきとした口調、大きな声でのご挨拶は避けましょう。
ふくさは必ず必要?
ふくさは、香典袋を型崩れや汚れから守る機能と、遺族の方と悲しみを共にするという意味があります。
香典をきちんとお渡しできれば、ふくさは必ずしも必要なものではありません。
しかし、大人のマナーとして1つは持っていた方がよいでしょう。
ふくさの代わりにハンカチを使用することもできます。
色はふくさと同様、寒色系の暗めのものを選び、大きさは標準の45cmのものなら大丈夫です。
なお、お葬式で使うハンカチについては、以下の記事を参考にして下さい。
ふくさに男女用はあるの?
基本的にふくさは男女兼用ですが、デザイン的に男性用、女性用として販売されているものもあります。
↑男性用ふくさ
金封ふくさのかぶせる部分がないタイプです。
背広の内ポケットにスマートに収まって、男性にとってうれしい商品ですね。
↑女性用ふくさ
リボンがあしらわれていて、女性向けのデザインですね。
しかし藍色とえんじ色は注意が必要です。
藍色
慶弔兼用で男性用。
女性が持つ場合は、弔事向き。
えんじ色
慶弔兼用で女性用。
男性が持つ場合は、慶事向き。
藍色、えんじ色を使用する時は、性別と用途を間違えないようにしましょう!
ただ上記のことを知らない方は、葬儀で女性がえんじ色のふくさを出したら、「慶事用なのでは?」と思われるかもしれません。
よほどのこだわりがない場合は、やはり弔事用には寒色系を使用した方がよい、と私は思います。
紫色は、男女兼用・慶弔兼用になります。
迷ったら紫色を購入することをオススメします。
ふくさはお布施を包む時にも使用できる
通常、僧侶へのお布施は、切手盆に載せてお渡しします。
切手盆は、葬儀場で貸してくれることもあります。
しかし切手盆を用意できない場合は、代わりにふくさを使用します。
お布施の包み方は、香典と同様です。
切手盆はこれくらいのものであれば慶弔両用で末永く使えるでしょう。
仏教以外でもふくさは使えるの?
ふくさは、日本の心遣いを表現したもので、仏教とは関係ありません。
神道やキリスト教など、他の宗教でも使用できます。
しかし香典の表書きは宗教によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
葬式で香典を包むふくさのまとめ
ふくさの色や種類、包み方や渡し方についてまとめました。
- 葬式で使うふくさの色は?
- 弔事用は寒色系
- 紫色は慶弔両用
- 柄は無地が望ましいが、弔事を意識した柄が控えめに入っていてもOK
- ふくさの種類は?
- 金封ふくさ・・・香典袋を差し込むタイプ
- 爪付き・台付きふくさ・・・ふくさがほどけないように爪をループにひっかけて留めることができたり、香典を乗せる台(切手盆)がついている
- 正式なふくさ・・・シンプルな風呂敷タイプ
- 弔事のふくさの包み方
- 金封ふくさ・・・左開きで、香典袋を左から差し込む
- 四角い布状ふくさ・・・右→下→上→左の順で包む
- 受付での香典の渡し方
- ふくさは必ず受付係の前で開ける
- 受付係が表書きを読めるように、香典の向きを相手の方に回転させて両手で渡す
- ふくさは必ず必要?
- 必ずしも必要ではないが、大人のマナーとして持っておいた方がよい
- 代わりにハンカチを使用してもよい
- ふくさに男女用はあるの?
- ふくさは基本的に男女兼用
- 藍色、えんじ色のみ、性別・用途に注意して使用する必要がある
- ふくさはお布施を包む時にも使用できる!
- 僧侶にお布施を渡す時、切手盆の代わりにふくさを使用してよい
- 仏教以外でもふくさは使えるの?
- ふくさは日本の心遣いを表現したもので、仏教とは関係ない
- 他宗教でも使用OK
※どちらも香典を取り出す時は、左開きになるように!
実際にふくさについて周囲に聞いてみたところ、「持っていない」「使わない」という意見も多かったです。
ふくさは香典を相手に渡すまでに必要なもので、あまり人目に触れるものではないので、気にしない人は気にしないでしょう。
しかし、ふくさは日本人の思いやりの心や礼儀作法の表れであり、また着物文化に由来する大切なものをつつむという文化の象徴でもあります。
東京オリンピックを目前に、今一度日本人としての誇り、おもてなしの心を考える時代が来ています。
あなたの知性と心遣いに、気づく人は気づきます。
大人のマナーとして、ふくさに関する知識を持ち、葬儀の際には是非ふくさを活用してみてください。
なお、お布施について、詳しくは以下の記事を参考にして下さい。