お葬式はいつも急です。
長患いしている人がいる場合は別ですが、準備をしていないことが多いものです。
喪服は無事に着用できても、なかなか靴まで手がまわりません。
あわてて靴箱を見てみると、ほとんど着用したことのないスエードの黒い靴があります。
スエードはNGとどこかで聞いたことがあります。
けれど、デザインが地味目で派手な装飾もないのなら良いのでは、とも思います。
お葬式にスエードの靴は非常識で本当にマナー違反なのでしょうか?
今回はスエードの靴はお葬式に履いて行っても良いか、実際の所どうなのかも交えつつ解説いたします。
お葬式へ履いて行く靴にスエードは基本不可です
葬式にスエードの靴を履いていくのは、マナー違反です。
「スエードといっても、プレーンなデザインもあるし、それ程マナー違反にはならないのでは?」と思われるかもしれませんね。
ですが、いくらプレーンなデザインであろうと、スエードは革製品であり、葬式の場に相応しい靴とは言えません。
子供や学生であるならまだしも、一人前の社会人ともなれば、マナーをきちんと理解し、相応しい靴を履いていく必要があります。
特に、足元のマナーは疎かになりがちですが、弔事である葬式の場において多くの人は悲しみのため、うつむいています。
そんなとき目につくのは、当然ですが足元なのです。
葬式の場で恥をかかない為にも、足元のマナーについてもきちんと押さえておきましょう。
なお、取り急ぎお葬式用にそろえるなら、以下のようなパンプスで大丈夫です☟
スエードの靴がNGなわけ
まず、具体的にスエードの何が良くないのかを考えてみます。
葬式だから、殺生を連想させるものはNGと、単純に考えてしまいます。
実は「殺生=死」ではなく、仏教の「不殺生戒」という戒めから来ています。
「不殺生戒」って仏教の勉強をしていないと馴染みがないでしょう。
意味については、下記を参照ください。
「不殺生戒」とは「無為に生き物を殺してはいけない」という戒めです。
これは仏教徒の守るべき十重禁戒という10項目からなる禁止事項の1番目の戒めです。
この教えは単純に無為に生き物を殺生してはいけないというだけではありません。
大事なことは私たちが生活していく上で消えていくすべての命へ感謝の気持ち、思いやりの心、慈悲の心を忘れないということです。
通常の生活でも忘れないようにしないといけませんね。
仏教ではこの大事な戒めがあるので、殺生を連想させるスエードの靴はNGなのです。
同じ理由で、本革やクロコ革、それに似た合皮素材の靴もNGです。
もちろん、動物柄(型押しも含む)の靴もNGです。
スエード以外にカジュアルの靴もNG
「不殺生戒」にプラスして、スエードはカジュアルなイメージがあります。
飾りのついたモカシン、おしゃれなカットのデザインの靴が思い出されませんか?
なので上品なパンプスもあるのですが、どうしてもカジュアルと感じる人が多いようです。
やはりお葬式というフォーマルな場所に参列することを考えると、カジュアルと感じられるスエードはNGです。
ベルベットやエナメルの靴もファッション性が高く、カジュアル要素が高いのでNGとなります。
ましてや金色の飾りがついているものは言うまでもありませんね。
葬式におしゃれは不要なのです。
大事なのは、亡くなった人を悼む気持ち、だけです。
もともと布製の靴は喪服と共布だった
よく考えてみると、日本に洋装が入ってきたのは高々150年前です。
そして、オーダーメードの服が主流でした。
喪服も同じでオーダーメードでした。
その際に、共布で靴やかばんも作っていました。
従って正式には布製の靴とは喪服と共布で作られたものです。
ただ、庶民にはそれは高嶺の花でした。
今は洋装喪服は既製品を購入することが多いので、靴も自然と共布の靴は見なくなりましたね。
もし機会があれば、ぜひ一式そろえてみてはどうでしょうか。
葬式の靴でスエードは絶対NGなのか
「葬式の靴にスエードはNG」というのは分かりましたが、実際の現場はどうなんでしょうか。
近くの葬儀場に尋ねた結果
マナーというのは法律のようにはっきり決まっているものではありません。
スエードの靴が本当にNGで、参列者は誰も履いていないか、近くの葬儀場に尋ねてみました。
葬儀場の方曰く
「今はみなさん様々な靴を履いていて、あまり気にしてる方はいません。
派手なものでなく、黒っぽい靴なら大丈夫ですよ。」
「必ずしもスエードがダメではないです。
ただ、身内のご葬儀に参列されたり、マナーにうるさい方が参列されるのならば、買い直したほうが良いですよ。」とのことでした。
ご葬儀で送られる方との関係や、参列される方々によって柔軟に対応したらよい、というご意見ですね。
けれども緊急の時でないのなら、「備えあれば憂いなし」ということで葬儀用靴を一足購入しておきましょう。
マナー評論家酒井美意子さんの意見
マナーやエチケットを知りすぎていると、他人のルール違反が気になるのではないか。そうお尋ねしたら、
「むしろ、先方に合わせてまいります」
玲瓏たる答がかえってきた。達人の弁である。ほんものは違う、と脱帽した。
(村島健一「著者・酒井美意子さん」(酒井美意子『きものの常識』)より)— Monsieur Demi-soupir (@mo_men69) May 1, 2018
あなたはマナー評論家の酒井美意子さんをご存知ですか?
「ある華族の昭和史」という本の著者としても有名です。
また海外の皇室や日本の皇室にも精通されています。
マナー評論家としても有名で、著書「お葬式で困らない本」の中で、「洋装喪服の靴はバックスキン」と書かれています。
海外の皇族の方は、バックスキンの靴を着用されているそうです。
海外では仏教よりキリスト教を信じる方が多いので、革でも問題ないのです。
だから海外においてはバックスキンの靴もOKです。
「バックスキン」とは雄鹿革に表面をこすって起毛させたものです。
洋服や靴、手袋、かばんなど、どちらかというとカジュアルな洋品に使われています。
革を起毛させたものとしては、バックスキンとスエードそれにヌバックと3種類あります。
スエードは牛革の裏面をこすっているもの、ヌバックは牛革の表面をこすって起毛させているもの。
この3種類は見た目が似ているので、素材表示を見ないと、どれがどれか分かりにくいものです。
ここまでお話ししましたように海外では、葬式にスエードに似たバックスキンの靴はOKですが、やはり日本では基本的にNGと考えておくべきです。
葬式の靴は女性の場合は布製のパンプスが正式
お葬式に履いて行く正式な靴は、女性の場合布製のパンプスです。
男性は本革や合皮の靴なのに女性はできれば布製と言われます。実際は布製を履いている女性はごく少数ですが。
なかなか店頭では売っていないですが、通販を探せば見つかりますよ。
私も通販で靴を購入するのはサイズ感が合わない気がするので抵抗ありますが、口コミで大きさを確かめて購入予定です。
やはり、そこそこの年齢になればしっかりマナーにあった物を用意しておきたいです。
ただ、布製の靴を購入する時に、大事なことがあります。
必ず撥水加工をしてある靴を選ぶこと。
葬式は常にいい天気の日ばかりとは限りません。
大雨でも表を歩くこともあります。
ぼとぼとで脱げないなんて、みっともないです。
撥水加工がしてあっても、念のために防水スプレーをかけておく事をおすすめします。
布製パンプスは商品数は多くないですが、探すと以下のようなものがあります。
こちらは、撥水加工されていますね☟
葬式に履いて行く靴にスエードは非常識かのまとめ
葬式に参列する時に履く靴として、スエードは基本的にマナー違反です。
特に仏教式の葬式では「不殺生戒」により、皮革製品はNG。
マナーにぴったり合うのは布製の靴です。
スエードのように、素材がNGの靴は多いですが、実際の葬式では気にしないところも多いようです。
かといって、知っているのにマナー違反し続けるのもよくないですね。
NGな靴とその理由をまとめてみました。
- 基本的にスエードの靴はNG
- 殺生を連想させるものはダメ
- カジュアルなものはダメ
- 金具がついているような靴はダメ
- 喪服と一緒にオーダーメードするのが一番良い
- 実際のお葬式ではさまざま
お葬式なので、死を連想させるものは良くない
型押しやアニマル柄ももちろんダメ
スエードはカジュアルという認識
ベルベットやエナメルも同様
お悔やみの場なので、華美なものはNG
結婚する時にオーダーメードするのならば一緒に仕立ててもらう
スエードの靴を履いている人もあり、100%ダメとは言い切れない
送られる人との間柄・参列される方々に合わせる
時代とともにマナーは少しずつ変わってきます。
また、地域ごとにも違います。
自分が正しいと思っていても、他人からみるとおかしいことも多々あるでしょう。
スエードの靴も大人しいものなら、履いていても目立たないです。
けれども、自分がマナー違反している気分になって、気になってしまいませんか?
また実際にマナー厳守されている方から、後ろ指を指されているかもしれません。
わざわざ高価な本革のパンプスを買わなくても、安価な合皮のパンプスを用意しておきましょう。
そうすれば何も気にせず、もやもやせずにいつでも急なお葬式に対応できます。
若いうちは大目にみてもらえても、年齢を重ねるごとに他人の目も厳しくなります。
もしスエードの靴しかないのなら、新しい靴を我慢して一足パンプスを用意することをお勧めします。
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