近親者が亡くなると、遺族は喪に服しますよね。
この喪に服す期間のことを「喪中」と言いますが、「喪中」をどのように過ごしたらよいのでしょうか。
喪中にしてはいけないことと言われても、なんとなくわかる気もしますが自信が無いというのが本音ではないでしょうか。
私もかつて親族を亡くした時、年長者の言われるままただやり過ごした経験があります。
あの時、ちゃんと意味をわかって行動していたら良かったなと今は思っています。
そんな反省もあって、「喪に服す」意味を踏まえながら、今回は「喪中」にしてはいけないことについて、「殺生」など9つの具体例を挙げてその是非を解説いたします。
「喪中」のマナーをお伝えしますよ。
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「喪中」の期間とは?
肉親や近親者が亡くなると、遺族は一定の期間、身を慎んで過ごさなくてはいけません。
身を慎むというのは、お祝いごとをやめたり控えたりするという意味なんです。
このことを「喪に服す」と言い、喪に服す期間のことを「喪中」と言います。
明治七年に布告された「服忌令」には、血族や婚族、またその関係によって期間が細かく決められていました。これは、100年以上も前の話です。
現在では、故人との関係によって期間が変わることはなく、故人が亡くなられてから1年間を「喪中」とするのが一般的です。
ここで、「喪中」にしてはいけないことを説明する前に、まず「忌中(きちゅう)」についても触れておかなければなりません。
実は「喪中」の中には「忌中」という期間が含まれているのです。
「忌」とは、死者が出たことにより不浄な穢(けが)れがついているという意味です。
この穢れのついた期間を「忌中」と言います。
「忌中」は、近親者が亡くなられてから49日間を差します。
49日の法要を済ませると故人の魂は成仏し、遺族からも死の穢れがはらわれます。
このことを、「忌が明ける」といいます。
「忌中」と「喪中」の意味と期間はこのようになります。
意味 | 期間 | |
---|---|---|
忌中 | 死の穢れがある期間、魂が成仏するまでの期間 | 亡くなってから49日間 |
喪中 | 故人を偲(しの)ぶ期間 | 亡くなってから1年間 |
これを踏まえて、「喪中」にしてはいけないことを具体的に紹介しましょう。
「喪中」にしてはいけないこと
ここでは、「喪中」にしてはいけないことを一つ一つ解説してまいります。
故人の冥福を祈りつつ心に刻んで下さい。
殺生(せっしょう)と肉食
「喪中」に殺生をしてはいけないという言い伝えをよく聞きます。
殺生って小さな蚊も殺してはいけないと言うことでしょうか。
ここからは宗教観にもなりますが、少し説明しましょう。
昔は「忌中」に、生き物を殺すことや、なまものを食べることを避けました。
49日の法要後に初めて精進料理を食べて「精進落とし」をし、禁止が解かれたのです。
ところが最近では、葬儀当日に精進料理を食べて精進を落とすのが一般的です。
ですから、「忌中」に肉食はダメということではないのです。
少し肉食を控える程度でよいでしょう。
これは、修行僧が仏道に精進する中で、戒律の第一に「不殺生戒」=生き物を殺さないことが説かれているからです。
だからといって、仏教では肉食を禁止しているわけではないのです。
仏教の食事の原則は「施されたものをいただく」ことなので、人から肉を施されれば(例えばカレーの中の肉のように)、ありがたくいただくこともまた、修行なのです。
殺生の中でも、蜘蛛を殺してはいけないと思っている方もいますね。
これは、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の影響だと思われます。
小説の中で、お釈迦様が地獄に落ちたカンダタを、蜘蛛の糸で助けようとするくだりがありますね。
以来、蜘蛛はお釈迦様のつかいだから、蜘蛛を殺してはいけないと思うようになった人がいるのではないでしょうか。
また、蜘蛛が益虫だからということも一つの考えです。
では、害虫と言われる蚊やゴキブリを殺すことはどうでしょうか。
そもそも、私たちは知らないうちに虫を踏んでしまっていますから、殺生をしないなんて不可能なんです。
だから、特に精進中の「忌中」において、できるだけ無益な殺生を避けましょうという教えがあると考えれば良いのです。
だから、蚊やゴキブリを殺してはいけないという意味ではありません。
ただ仏教では、輪廻転生という教えを解いていますね。
これは何度も生まれ変わるという意味ですが、人間に生まれ変わるとは限らないのです。
仏教では、全ての人は色々な生き物に生まれ変わり、すべての生命の尊さは平等だと説いているのです。
それで、亡くなった魂が目の前の小さな蚊に生まれ変わったかもしれないので、むやみに殺生しないようにしようと考えたのでしょう。
これについては、色々な宗教で解釈が違いますので、自分の信仰に合わせて行動すればよいと思いますよ。
年賀状
私たちが、「喪中」というと、真っ先に思いつくのが「喪中ハガキ」ですね。
これは、「喪中」を経験したことがない方でも、必ず一度は目にしたことがあるでしょう。
「喪中」の1年の間には、必ずどこかで新年を迎えます。新年はお祝いの行事ですから、当然控えなくてはいけません。
年賀状を交換している方々には「今年は『喪中』なので年賀状を控えます」というメッセージを送りましょう。
ただ最近では、年賀状ではなく、SNSなどでお知らせする方も多くなってきました。
もし、「喪中」に年賀状をいただいてしまった場合は、松の内(正月7日、或は15日)が済んでから「寒中見舞い」をお返しすれば、問題ありません。
次の例ように、「喪中ハガキ」を出し忘れたことで、相手が気まずい思いをすることもありますので、「喪中ハガキ」は、11月中旬以降12月初旬までには必ず出しましょう。
数日前に #寒中見舞い が届きました。内容は、#喪中 のため年始の挨拶を欠礼したというものでした。寒中見舞いは、こういった使い方もできます。
ただ、この方には、喪中を知らずに年賀状を出していたので、解っていたら…と、後ろめたい気持ちになった事だけは確かです。 pic.twitter.com/ISTdHnVXjN— いい日本再発見 (@ii_nippon) January 30, 2020
外出と服装
実は、「喪中」の中でも、特に穢れのついている期間である「忌中」に、してはいけないことが多いんです。昔は、「忌中」は、自宅に籠(こも)って過ごしたようですよ。
あなたも、死者を迎えたばかりのお宅を訪ねるのは、なんとなく嫌な気持ちになりませんか。
不吉な感じがするとか、災いが身にふりかかりそうとか、不運をもらってしまうのではないかとか…
そんな思いがよぎりませんか?
死者を迎えたばかりの家に行くのをためらうのは、死の災いが宿っているという宗教観が古くからあるからではないでしょうか。
そのため遺族は、その災いを他人に及ぼさないように配慮しなければいけませんでした。
それで、忌が明けるまでは、できるだけ他人に接触しないようにしたのです。
また、昔は「喪中」の間は喪服を着て過ごしたそうですよ。
ずっと喪服を着て過ごすなんで、今では想像できないのですが、自分が喪中であるということを、視覚的に世間にお見せして、お祝いごとを控えたのでしょうね。
地域によって風習は違いますが、今では「喪中」に外出や買い物をしてもとやかく言われることはありませんし、喪服を着て過ごすことも無くなりました。
とはいえ、少なくとも49日までは、あまり派手な色の服を着用して出掛けることは避けた方がいいでしょう。
結婚式
お祝いごとの代表例として、まず「結婚式」があげられますね。
当然「喪中」は結婚式を行うことも、出席することもできれば控えましょう。
特に「忌中」は避けたほうが無難です。
まれに、「慶事」と「弔事」が重なってしまうことがありますが、基本的には「弔事を優先」しなければいけません。「結婚式」よりも「喪に服す」ことを優先してください。
ではなぜ、「喪中」にお祝いごとをしてはいけないのでしょうか。
人が亡くなるということは、邪気が集まってきている状態なんです。
その状態でお祝いごとを行うと、逆に悪いことを呼び込んでしまうことになるからです。
これでは、せっかくのお祝いごとが台無しになってしまいますよね。
中には、縁起を担いで非常に神経質になられる方もおられますので、結婚式は遠慮しましょう。
現代では、延期や中止が難しいものは、忌が明けてから行うことが多くなりました。
どうしても「忌中」に結婚式に参加しなければならない場合は、先方にその旨を伝えして、丁寧にお断りするのがエチケットです。
それでも出席して欲しいと言われた場合は、事前に厄除けの「お祓い」を受けておくと良いでしょう。
ではあなた自身が結婚式を行う場合はどうでしょうか。
予定をしていた場合は、キャンセルや延期ということが考えられます。
しかしながら、それはお二人にとっても両家にとっても負担がかかる話です。
皆さんでお話をされ、「喪中」であれば予定通り進める方向で検討して良いと個人的には思いますし社会通念上も間違いとは言えません。
故人も楽しみにしていたことでしょうし、キャンセルや延期で経済的な負担がかかることを望むでしょうか。
できれば、披露宴も故人の席を設けるなりして一緒に祝福してもらうのが好ましいですね。
「忌中」の場合は少し厳しめになりますが、ケースバイケースと言えます。
キャンセルや延期する時期によって、キャンセル料の金額も変わるでしょうし。
経済的な負担が大きいのに、無理に予定を変更するのは考えものです。
お二人や両家の強い意向があれば別ですが、故人の供養と捉えて前向きに進みたいものです。
ウェディングプランナーの方は過去にそのような事例を経験されているはずですから、結婚式や披露宴の設定について相談し、総合的に判断しましょう。
お祭りや式典などのお祝いごと
次にお祝いごとで考えられるのは、お雛祭り、端午の節句などの「お祭り」や卒業式、入学式の「式典」、「七五三」、「百日祝い(お食い初め)」、「還暦祝い」「新築改築祝い」などですね。
これらも厳密には「喪中」の間はできるだけ控えるものですが、現代においては柔軟に対応して良いという考え方が大勢を占めます。
ご家族にとって一生に一度のお祝い事をなくしてしまうのは少々行き過ぎた感があります。
ただし、「忌中」に神社を参拝するのは慎みましょう。
当然のことながらお祝い事を執り行う際は、「喪中」であることを自覚して、あまり派手な服装や振る舞いは控えてくださいね。
旅行
「喪中」の旅行は構わないというのが昨今では主流の考え方です。
ただし遊興に高じてドンチャン騒ぎをするようなことは慎んで、心穏やかにくつろぐようにしたいものです。
特に社員旅行では、同僚と日ごろの仕事のストレスを発散しがちです。
付き合いは大事にしながらも喪中であることを忘れない心を持つことでそれは良しとしましょう。
家族旅行、友人知人との旅行はかけがえのない経験であり、それをムダにするのは悲しいことです。
ですが、先でもいい旅行をわざわざ「忌中」に計画するような無節操なことはやめましょうね。
喪中での旅行について、詳しくは以下の記事をご覧になってください。
初詣・神社への参拝
「喪中」での参拝は身を慎みながら可能です。
ただ「忌中」の場合は、初詣などは見送ります。
神社は神様へ感謝と畏敬の念を表す場所です。
神様は死を最も嫌いますので、特に初詣は避けましょう。
これは、新年のお祝いに集まってくる多くの方への配慮でもあるんです。
1年で最もお目出たい日に「忌中」の自分が参拝することで、多くの人のハレの日をけがしてしまうのはイヤですよね。
では、神様に近づかなければ鳥居はくぐってもいいのでは、という人もいますが、鳥居もくぐってはいけません。
「忌中」に無理をして参拝をするよりも、49日を越えてから参拝するようにしましょう。
喪中の場合、初詣の参拝はどうしたらいいか?とのご質問が多いのですが神道は50日を境にご参拝頂きたく思います。また半年に一度の大祓を受けて頂ければこの限りではありません。尚、お住まいの地域により風習が違います。#少彦名神社 #大祓 #大阪 #喪中 #初詣 #神社仏閣 pic.twitter.com/op6C3l3K6p
— 少彦名神社(神農さん) (@sinnosan1123) December 30, 2019
一方、お寺は仏様の教えを受け取りお経を唱える場所です。
お寺への参拝は構いません。
神棚
神棚はどうしたらいいの?
神棚は神様を祀(まつ)る場所です。
家の神様にも、当然死の穢れが及ばないようにしなければいけません。
ご家庭に神棚がある場合は、扉を閉じて白い半紙をかければいいですよ。
扉がない場合は、半紙だけをかけておけばよいでしょう。
忌が明けたら、半紙を取り除いて、扉を開けましょう。
新年のお祝い
新年のお祝いは、年神様をお迎えして感謝をし、多幸を授かる行事です。
「喪中」は、神様をお迎えする行事を行ってはいけません。
具体的には、門松やしめ縄、鏡餅などの正月飾りは必要ありません。
おせち料理も用意しないのが一般的ですが、鯛や海老、紅白かまぼこなどを避ければ、いただくのは問題ありません。
この時、重箱や祝い箸は使わず、日常で使う食器を使いましょう。
お屠蘇も遠慮しましょう。
とはいえ、自分が「喪中」の時は、ここまで厳密に守れなかった気がします。
「喪中」を経験した時はまだ学生だったので、お祝いの意味のある食べ物や食器についてまで、特に気にしませんでした。
「喪中」は、それらについての意味をお子さまに教えるよい機会だと思いますよ。
お祝いの意味が含まれていますよ
去年
使わなかった箸( *・・)#喪中#使えなかった pic.twitter.com/GgWg9JZ47x
— ぴーだぷ~(・Θ・)@JAPAN JAM!! (@Akky14583003) December 20, 2019
「喪中」にしてはいけないことのまとめ
ここまで、「喪中」について意味と期間を説明しながら、してはいけないことについて解説しました。
あなたの疑問は少し解決できたでしょうか。
- 「喪中」には、特に注意して過ごす「忌中」がある
- お肉は食べて構いません
- できるだけ殺生を控える
- 年賀状を控える
- 49日までは派手な服装での外出は控えたい
- 自身の結婚式は行う方向で、参加はお相手次第
- お祝いごとは構わないが忌中に神社には参拝しない
- 旅行は構わないが節操のある行動をすること
- 神様は死の穢れを最も嫌うので50日以降に初詣に行くこと
- 新年のお祝いはしない
- 神棚の扉を開けておかずに閉めて半紙をかける
「喪中」は仏教の教えに基づき、故人を偲びながら慎ましく生活する期間です。
現代では、「喪中」にしてはいけないことは、昔ほど厳格ではなくなりました。とはいえ「喪中」は自分の家だけの問題ではありません。
不用意な行動によって、相手の慶事を穢してしまったり、人から非常識だと思われることもあるのです。「喪中」は、基本的なマナーに沿って良識ある行動を取ることが大切です。
お祝いごとや派手なふるまい、また無益な殺傷をできるだけ慎み、他人への配慮を忘れずに心静かに過ごすことをお勧めします。